屋島やしま)” の例文
もちろん義経の事蹟じせき、ことに屋島やしまだんうら高館たかだて等、『義経記』や『盛衰記』に書いてあることを、あの書をそらで読む程度に知っていたので
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
昔から高松城たかまつじょう栗林公園りつりんこうえんで名高い所。源平の戦いで有名な屋島やしまも、金毘羅様こんぴらさまの名で船乗に知られている琴平神社ことひらじんじゃも、同じ讃岐の名所であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
オラーフ・トリーグヴェスソンが武運つたなく最後を遂げる船戦ふないくさの条は、なんとなく屋島やしまだんうらいくさに似通っていた。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
暮色ぼしょくほとんど海原をおおい隠す頃になると、小豆島の灯台が大きくまたたきそめて、左手には屋島やしまの大きな形が見えそめて来る。もう高松に着くのに間がないことを思わしめる。
別府温泉 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
源平屋島やしまの合戦をみせる。こういう神通力じんつうりきをもっている狐であるから、土地の者も「小女郎さん」とおそれうやまって、決して彼女に対して危害を加えようとする者もなかった。
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
扨は我が諫めをれ給ひて屋島やしまに歸られしか、然るにても一言の我に御告知しらせなき訝しさよ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この山に無為な生命をつづけようとするならば、屋島やしまの浦から祖谷いやへ落ちてきた平家の余族のように、それはいとやすいことに思える。しかし、麓の手配りを破る策は絶対にない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大將となし一ノ谷の戰ひに平家の十萬騎を討平うちたひらなほまたすゝんで屋島やしまだんうらの戰ひに平家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
屋島やしまへの電車の中でも、ケーブルにのってからも、それはときどき全身をおそった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
はいよ/\うれしくてたまらず、川面かわづらは水も見えぬまで、端艇ボート其他そのたふねならびて漕開こぎひらき、まは有様ありさま屏風びやうぶに見たる屋島やしまだんうら合戦かつせんにもて勇ましゝ、大尉たいゐ大拍手だいはくしゆ大喝采だいかつさいあひだ
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
私達は、屋島やしまの戦いに敗れた平家の話や、腺病質せんびょうしつの弱々しい少女が荒い世の波風にもまれている話を聞くとき、その哀れな一種の美しさにうたれます。——それが衰滅の美というのでしょう。
季節の植物帳 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
この山の海のながめにたぐへては屋島やしま鳥羽とばもなほかずけり
雲仙岳 (新字新仮名) / 菊池幽芳(著)
南に飾磨しかまの津をいだき、舟行しゅうこうの便はいうまでも候わず、高砂たかさご屋島やしまなどへの通いもよく、市川、加古川、伊保川いほがわなどの河川をめぐらし、書写山しょしゃざん増位山ますいやまなどのけんを負い、中国の要所にくらい
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今は屋島やしまの浦にいかりを留めて、ひたすら最後の日を待てるぞ哀れなる。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)