小太刀こだち)” の例文
小太刀こだちをとっては、伊那丸いなまるはふしぎな天才児である。木隠龍太郎こがくれりゅうたろうも戒刀の名人、しかも隠形おんぎょうの術からえた身のかるさも、そなえている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
経之はなお手をあげようとした時、突然、癇癖かんぺきに逆上した定明はやかたに飛びこむと、小太刀こだちを携えて素足で庭石の上におりた。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「曲者は安宅あたかの弁吉ですよ。やくざ者だが小太刀こだちの名人で、自分の腕に慢じて、武家の髷などを切って見度くなったんですね」
次の晩は小太刀こだちの指南役、三日めは家中きってのつかい手が、一夜に三人までもやられたのじゃ。
小太刀こだちをとっては小天狗といわれる名人なんです、あの若い方と、それからもう一人、永倉新八様とおっしゃるのと二人で、あの相手の六人を瞬く間に斬ってしまいました。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
といいながら、いきなり小太刀こだちに手をかけて、こわいかおをして和尚おしょうさんをにらめました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
向うへ対手あいてに廻しては、三味線の長刀なぎなた扇子おうぎ小太刀こだち、立向う敵手あいての無い、芳町育ちの、一歩を譲るまい、おくれを取るまい、稲葉家のお孝が、清葉ばかりを当のかたきに、引くまい、退くまい
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
取り落すにぞお花は直くと立上り樣吾助が肩先かたさき五六寸胸板むないたかけ斫込きりこんだり然れども吾助はしにもの狂ひ手捕てどりにせんと大手をひろげ追つまくりつ飛掛るをお花は小太刀こだち打振々々うちふり/\右にくゞり左に拂ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「くそッ——」とばかり、十手をこうに飛びかかッてゆくと、周馬はまたも五、六歩逃げて、キラリと前差まえざし小太刀こだちを抜いた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「曲者は安宅あたかの辨吉ですよ。やくざ者だが小太刀こだちの名人で、自分の腕に慢じて、武家の髷などを切つて見度くなつたんですね」
左京流小太刀こだち、ならびに山住流含み針指南。
ずるずると、引きもどされた伊那丸は、声もたてなかった。だが、とっさに、片膝かたひざをおとして、腰の小太刀こだちをぬき打ちに、相手の腕根うでねりあげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
娘のころ江戸のお屋敷で長刀なぎなたのひと手、柔術やわらから小太刀こだちまで教わり、家中かちゅうでも評判の腕前だったってね。
とそのすきに、小太刀こだちをかまえて、いいはなった伊那丸には、おさないながらも、天性のがあった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また女子おなごのたしなみはもとより、薙刀なぎなた小太刀こだちまで修めているという才媛だから、縁談などは数々あっていいわけだが、それをああしているには、ご孝養のためばかりでなく
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)