つぶ)” の例文
「江戸の事情は、またつぶさに、ただす人間が、この小屋へ戻って来たのだ。今、それにも引き会わせるから、こっちへ来い」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて彼等は、大鳴門おおなると司令長官の前に立って、米国艦隊の退路を絶つ機雷の敷設ふせつ状況と、なお布哇ハワイ攻略の機が如何に熟しているかを、つぶさに報告することであろう。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一大事思い立ちたる事由をつぶさに述べたるのち、つつましく居ずまいを正し
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当局に於いては虚心平気で実地の真情をつぶさに調査報告し、改良すべき点ありと認むれば、飽迄あくまでも之が改善を命ずるのである、腹蔵なく述るがよい、世評が嘘伝うそであって欲しいと思うと述べた。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
あの痩せた土とわらの中に生れ、つぶさに生活の困窮をめてきたので、童心の中にもおのずから「経済」というものの観念が、つよく養われている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大膳と権之助のふたりから、平次郎の常々の行状やきょうの出来事を、改めて、もいちどつぶさに話すと、親鸞はいちいちうなずいて聞いていたが
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その日、孫権に召された周善は、張昭にも会って、つぶさに密計を授けられ、勇躍して、夜のうちに揚子江を出帆した。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
第三の報告、第四の報告と、江戸表の情報がもっとつぶさにあつまれば、主君のお気もちも、相手方の吉良との関係も、十分にわかってくるに違いない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだ、その報告は、藤吉郎から信長の耳にも入れてないが、陣中へ愛人を呼んだ理由を釈明するためにも——追っつけつぶさに語らなければならないであろう。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
七日ばかりの逗留とうりゅうをたのみ、身を潜めて、柘植嘉兵衛へ宛て、自分の心を披瀝ひれきしたつぶさな手紙を認めた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどかれは、その一語から直覚ちょっかくをつかんだ。庭番たちの影がいまつぶさに見廻っていた奥の一棟である。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あるいは「延宝伝燈録えんぽうでんとうろく」などのつぶさなものを調べたら、記名ぐらいは見出されるかもしれないが、とにかくその事蹟とか人間については、ほとんど見当るものがない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喜左衛門は、そう思って、一体どう切り口が違っているかを、まずつぶさな眼であらためてみたが、どっちがどう先に切ってあるのか、どこに相違があるのか、見出せないのだ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
君臣のあいだに、つぶさな報告から余談などが交わされたのは、それからのことであったらしい。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただわずかに或る時代を下総行徳在しもうさぎょうとくざいの藤原という土地に一庵をむすんで住んでいたという伝説があるくらいなものだが、肝腎かんじんな彼の江戸における行動など少しもつぶさでない。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
周瑜しゅうゆは二度も催促した。魯粛の聞きたいところもそこの要点だけだ。何を今さら、銅雀台の奢りぶりなどを、ここでつぶさに聞く必要があろうか——といわんばかりな顔つきである。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——今それをつぶさに書き出すとなると、再び、二年前にさかのぼって語り直さなけれはならなくなるから、ここでは、以下簡略に、柳生家へ救われた経路だけを概説することにとどめておく。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりの黙契している野望——あらゆるつぶさに亙って、近頃その邸内に起った顛末てんまつから、人見又四郎ひとみまたしろう江橋林助えばしりんすけとが、正義の剣をいで、かれらに迫ろうとしてかえってその陥穽かんせいに落ち
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と甲賀房、河内房の二人が、つぶさに実況を告げて、その後のこと
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これへ来るまでに、一行はかなりつぶさにそれらのことも知った。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つぶさに……」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)