容易やさし)” の例文
なぜって、いくら容易やさしい字でも、こりゃ変だと思って疑ぐり出すと分らなくなる。この間も今日こんにちこんの字で大変迷った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ところで笊の目をくぐらして、口から口へくくめるのは——人間の方でもその計略だったのだから——いとも容易やさしい。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東京の悪い食パンよりは田舎の食パンの方が上手に出来ている事も毎度あります。小山の妻君「それでは東京の人にむずかしくって田舎の人に容易やさしいような者ですね」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
しかし市民が自分たちですぐ列をつくってゆく心理や習慣を持っているということは彼等にとって決してなま容易やさしい生活経験から身につけられたものではないにちがいない。
列のこころ (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
町のうちですから両側に家が続いております。この辺は水の綺麗きれいな処で、軒下の両側を、清い波を打った小川が流れています。もっともそれなんぞ見えるような容易やさしい積り方じゃありません。
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何故なぜつて、幾何いくら容易やさしでも、こりやへんだとおもつてうたぐりすとわからなくなる。此間このあひだ今日こんにちこん大變たいへんまよつた。かみうへへちやんといてて、ぢつとながめてゐると、なんだかちがつたやうがする。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もつとれなんぞえるやうな容易やさしつもかたぢやありません。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)