そん)” の例文
抽斎はその数世すせいそんで、文化ぶんか中に生れ、安政あんせい中に歿ぼっした。その徳川家慶いえよしに謁したのは嘉永かえい中の事である。墓誌銘は友人海保漁村かいほぎょそんえらんだ。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
今日の状態は独りえん世凱せいがい〕政府たるがためのみでなく、袁ほろんでそんぶん〕が立とうが、こうこう〕が立とうが、誰が立とうとも同一である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その午後、そん軍曹の部屋を訪問した鉱山の経理チンリーは、半ば威嚇いかくするような、またびるような複雑な表情をして云った。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
古顔の朱貴を筆頭に、のおばさん、孫新、李立、時遷じせん楽和がくわ、張青、そんの妻などが、それらのことはやっている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そんを廃してを立つるだに、定まりたるをかえすなり、まして兄を越して弟を君とするは序を乱るなり、あに事無くしてまんや、との意は言外に明らかなりければ、太祖も英明絶倫の主なり
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「無理です。それですから白楽天が歌いました、任土貢むしかくノ如クナランヤ、聞カズヤ人生ヲシテ別離セシム、老翁ハそんこくシ、母ハヲ哭ス……ある時、その道州へ陽城という代官が来ました」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
清川安策そんは豊後国岡の城主中川氏の医官清川玄道がいの次男であつた。玄道は蘭門の一人で、其長男がちよう、次男が孫である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そん伍長は、門を出ながら、副官はどうして荷物を逆様さかさまにしたり、あんなおちつかない様子で持って行ったのだろう、一体何が入っていたのかと妙な気がした。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
奉行はこれの調べを、与力役のそんに命じた。そして、一応の証拠がためをなすまでの時日をした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そん伍長は、軽機関銃を持った一分隊を率いて、この街の上にのしかかる禿山はげやますその褐色の、丘を登って行った。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
「七代のそん、かならず天下をとり、時の悪政を正し、また大いに家名をかがやかさん」と。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前妻宝生氏には子徴、むすめえいがあつて、栄は鳥取の医官田中某に嫁した。継室柴田氏にはむすこそんむすめみきがあつて、幹は新発田の医官宮崎某に嫁した。按ずるに栄の嫁する所の田中氏は棠軒の生家である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
と、そん与力は、処刑判決のさい、日ごろの仏の孫さんにも似ず、色をなして詰めよった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
清川安策、名はそんであつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)