婆々ばばあ)” の例文
……皿小鉢を洗うだけでも、いい加減な水行みずぎょうの処へ持って来て、亭主の肌襦袢はだじゅばんから、安達あだちヶ原で血をめた婆々ばばあ鼻拭はなふきの洗濯までさせられる。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「旧弊はとくに卒業して迷信婆々ばばあさ。何でも月に二三べん伝通院でんずういん辺の何とか云う坊主の所へ相談に行く様子だ」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婆々ばばあはゐてサ、おきの前でヨ
思わず、心が、先刻さっきの暗がり坂の中途へ行って、そのおかしな婆々ばばあが、荒縄でぶら提げていた、腐った烏の事を思ったんだ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「雇ったのは引き越す時だが約束は前からして置いたのだからね。実はあの婆々ばばあも四谷の宇野うのの世話で、これなら大丈夫だひとりで留守をさせても心配はないと母が云うからきめた訳さ」
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先刻さっき入ったという怪しい婆々ばばあが、今現に二階に居て、はたでもその姿を見たものがあるとすれば……似たようなものの事を私が話したんだから。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心配するから迷信婆々ばばあさ、あなたが御移りにならんと御嬢様の御病気がはやく御全快になりませんから是非この月じゅうに方角のいい所へ御転宅遊ばせと云う訳さ。飛んだ預言者よげんしゃつらまって、大迷惑だ
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乞食より汚穢きたな婆々ばばあです、さうして塩茄子しおなすびのように干乾ひからびておりますよ。おお、胸の悪い、私が今参りました時は死骸の懐中をしらべておりました。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうすると、趣向をしたのはこの人では無いらしい、企謀もくろんだものなら一番懸けに、婆々ばばあを見着けそうなものだから。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
婆々ばばあじみるッて芳さんはお笑いだが、芳さんなぞはその思遣おもいやりがあるまいけれど、可愛かわゆい児でも亡くして御覧、そりゃおのずと後生ごしょうのことも思われるよ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「へい。ところでその、黒瀬という婆々ばばあはもう死歿なくなりました。」「えほんとうに?」「まったくでございます。」「そんなら用は無い、もう帰邸かえるとしようの。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と平べったい、が切口上で、障子を半分開けたのを、孤家ひとつや婆々ばばあかと思うと、たぼの張った、脊の低い、年紀としには似ないで、くびを塗った、浴衣の模様も大年増。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
貴下あなたはお邸の方かな。松の木に縊死くびくくりがあるで。」と巡査にわれてまた驚き、婆々ばばあの死骸を見て三度吃驚びっくり「やれ首をくくった、松の木が。」とあわただしく触込んだり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
われらこのはげしき大都会の色彩をながむるもの、奥州辺の物語を読み、その地の婦人を想像するに、大方は安達あだちヶ原の婆々ばばあを想い、もっぺ穿きたるあねえをおもい、紺のふんどし媽々かかあをおもう。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こんな婆々ばばあが、こんな顔で、こんな怨みっぽい事を言うたとて、何んとも思いはしなさるまいが、何じゃよ、雪が逢うてもこう言います。いまわしの言うたような事を言いますわいの。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)