好悪よしあし)” の例文
旧字:好惡
平生ふだん草をしげらして、春秋の彼岸や盆に墓掃除に来るのも、農家らしくてよい。墓地があまりにキチンとして居るのも、好悪よしあしである。と思うので、一向構わずに置く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
仮に容貌きりょうが悪いにしても、容貌の好悪よしあしで好き嫌いをするのは真に愛する所以ゆえんではない。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
叔父が確かに叔父その人に相違ないのなら、その人物の好悪よしあしに関係なく、僕は二川家を譲りたいと思う。何故なら彼が正当の相続者なのだから。けれども、もし彼が偽者イムポースターだったら。
その品に天地の好悪よしあしが出来ると同じことに、単に黒い布片を面に巻いただけのしぐさではあるけれども、そのまきっぷりにより、人柄そのものの活殺も生ずるというわけなのである。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何この騒ぎの中で好悪よしあしを言ふ物が有らうか、お売りお売りと言ひながら先に立つて砂糖の壺を引寄すれば、目ッかちの母親おどろいた顔をして、お前さんは本当に商人あきんどに出来てゐなさる
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すなわ上下じょうか議院の宏壮こうそう竜動府ロンドンふ市街の繁昌、車馬の華美、料理の献立、衣服杖履じょうり、日用諸雑品の名称等、すべ閭巷猥瑣りょこうわいさの事には通暁つうぎょうしていて、骨牌かるたもてあそぶ事も出来、紅茶の好悪よしあしを飲別ける事も出来
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
居合わした主人は、思わず勃然むっとして、貰う者の分際ぶんざい好悪よしあしを云う者があるか、としかりつけたら、ブツ/\云いながら受取ったが、門を出て五六歩行くと雑木林ぞうきばやしに投げ棄てゝ往った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
手近の枝を引寄せて好悪よしあしかまはず申訳ばかりに折りて、投つけるやうにすたすたと行過ぎるを、さりとは愛敬あいけうの無き人とあきれし事も有しが、度かさなりての末にはおのづか故意わざとの意地悪のやうに思はれて
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)