奥所おくが)” の例文
旧字:奧所
その光のうちでも、藤吉郎の心の奥所おくがまでした大きな光は、まだひのきの板も新しい神棚の一穂いっすい神灯みあかしであった。また、次の間の仏壇のあかりであった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
墓原の木立の奥所おくが夜はふかし月の光のたたずみにけり
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
崖の下は月輪川で、谷の奥所おくが月輪関白つきのわかんぱく兼実かねざねの墓があるという。墓といえば、ついそこの眉にせまる阿弥陀あみだみねの下あたりは墓や御陵ごりょうだらけだった。鳥部野が近いのである。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、女々めめしく郷里の母を想い出し、また、思うともなくい鴻芙蓉こうふようの麗しい眉や眼などを、人知れず胸の奥所おくがに描いたりして、なんとなく士気の沮喪そそうした軍旅の虚無きょむと不平をなぐさめていた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
誰かその唇を窒息ちっそくするほど吸ってくれて、そして体の奥所おくがのものに肉のいましめと血の拷問ごうもんを加えてくれるような力を望むらしく、ウームとくるしげにまなじりさえも吊ッて、身もだえして見せるのだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつとはなく梁山泊りょうざんぱく聚議庁ほんまる奥所おくがには、星をまつった一びょう——
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)