嘔吐へど)” の例文
どす黒い、どろどろした、おまけに嘔吐へどを吐いてもまだたまらないやうな悪臭を発散してゐるのだ。これが人間の死だと言へるだらうか。
鬼神 (新字旧仮名) / 北条民雄(著)
「杜鵑之介といったようじゃな? 杜鵑之介! 杜鵑! そうして今は暁だ! 隣室となりでは嘔吐へどを吐いている。よし! 出来た!」
紅白縮緬組 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
と/\が空腹すきはらに酒を飲んだやうなものでグデン/\に騒ぎ立つた挙句が嘔吐へどいて了うとヘタ/\に弱つて医者の厄介になると同様だ。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
所どころに嘔吐へどがはいてあったり、ゴミ箱が倒されていたりした。喬は自分も酒に酔ったときの経験は頭に上り、今は静かに歩くのだった。
ある心の風景 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
切れもしない刀を抜いては嘔吐へどの出るような見得みえを切って得意になっているのが、田舎廻いなかまわりならとにかく、江戸のまんなかではやっている。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
用うるなどという容態振りからして嘔吐へどが出る。赤壁で曹操を破ったものは、呉の周瑜しゅうゆの智とその兵力だ。小賢こざかしいわれこそ顔、片腹いたい
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、とうていそれだけでは、儂とメフィストとの契約パクトが……。いや、恐らくいまに儂は、貴方の衒学ペダントリーさに嘔吐へどを吐きかけるに至るでしょう
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
僕はその闇の中を僕の住居へ帰りながら、のべつ幕なしに嘔吐へどを吐きました。夜目にも白じらと流れる嘔吐を。
河童 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そこに背後うしろに人の足音が聴こえたので、南無三宝! 見付けられたかと、大急ぎで煙草畑から首を突出してみると、幸いに嘔吐へどはくところは見付けられず
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
その嘔吐へどでできた神の名はカナヤマ彦の神とカナヤマ姫の神、くそでできた神の名はハニヤス彦の神とハニヤス姫の神、小便でできた神の名はミツハノメの神とワクムスビの神です。
伊豆は手足をじたばたさせて口中から白い泡を吹いていたが、麻油が手を離してからしばらくあっぷあっぷしていて、おもむろに四這よつんばいになると、部屋の中央へ白い嘔吐へどを吐き下した。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
大鴉レベンといえどもやはり生あるものだから、そう振り廻されてはたまらない。さかんに嘔吐へどを吐く。西洋人もやはり嘔吐を吐くというものだという真理をおれはいやというほど発見した。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そして、その段々に飯粒や蟹の肉や茶色のドロドロしたものが、ゴジャゴジャになった嘔吐へどが、五、六段続いて、かかっていた。嘔吐からは腐ったアルコールのにおいが強く、鼻にプーンときた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
蠑螈の赤腹を見ると、嘔吐へどが出る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
君がどんなに嘔吐へどを吐いて
やがて、嘔吐へどをつく奴がいる。目をすえて、飲み仲間をジロジロめまわしている奴がある、またふだんの慢心に火をそそいで、あるものは
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黙れ黙れ! 言語道断の代物だ——笑って済むだけならまだいいが、見て嘔吐へどが出る、ことに、第五句のところ……」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「どうです、一句出ましたぜ、洪水に女のももの白きかな——ハッ、ハッ、いかがでげす」などと、嘔吐へどのごとき醜句しゅうくを吐き出せば、かたわらの痩男は小首をひねって
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ここまでは万事がすこぶる理想的に発展したが、遺憾ながらくと同時に、急に胸がむかついて来て、Hはその儘その廊下へ甚だ尾籠びろうながら嘔吐へどを吐いてしまつた。
東京小品 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
伊豆は手足をじたばたさせて口中から白い泡を吹いてゐたが、麻油が手を離してからも暫くあつぷあつぷしてゐて、おもむろに四這ひになると、部屋の中央へ白い嘔吐へどを吐き下した。
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
嘔吐へどをもつて
それはちょうど家々の空に星明かりも見えない荒れ模様の夜です。僕はそのやみの中を僕の住居すまいへ帰りながら、のべつ幕なしに嘔吐へどを吐きました。夜目にもしらじらと流れる嘔吐を。
河童 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これはいかなこと! 昨日きのう登山第一の元気はどこへやら、焼酎しょうちゅうは頭へのぼって、胸のあしき事はなはだしく、十二、三町走るか走らぬに、とてたまらず、煙草たばこ畑の中へ首を突込んで嘔吐へどく。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
座敷の真ん中で四つんいになると、やがて白っぽい嘔吐へどを吐き下した。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
船に乗ったら嘔吐へどでもするより
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やがて白つぽい嘔吐へどを吐き下した。
小さな部屋 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)