喊声かんせい)” の例文
旧字:喊聲
すると背後でわあっと喊声かんせいをあげた。平一郎はどこまで卑屈な奴だろうと思った。彼はたまらなくなって、展げられた傘をすぼめつつ
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
ときに突然、背面の山から、またまた、金鼓を鳴らし、喊声かんせいをあげて、この大血河へ、さらに、剣槍の怒濤を加えてきたものがある。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「夜毎、アポリマ水道の上空で、雲の中から物凄い喊声かんせいが聞える。ウポル島の神々と、サヴァイイ島の神々とが戦っているのだ。」
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
支械の林はどっと喊声かんせいを挙げた。元三はいよいよ間誤まごついて大きな目をぐりぐりさせ、自分の身をどう始末していいか天手古舞いをした。
土城廊 (新字新仮名) / 金史良(著)
ワッと喊声かんせいをあげて、一同は手に手に、拳銃を持って、飛び出した。扉らしいものを、いきなり蹴破けやぶると、地下室の広い廊下が、現れた。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
プランクは物理学を人間の感覚から解放するという勇ましい喊声かんせいの主唱者であるが、一方から考えると人間の感覚を無視すると称しながら
物理学と感覚 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
狂暴な音楽と喊声かんせいにつれて、追いつ追われつしている、ホセとカルメン、どうしたわけか、多分服装のせいであったろう、私はそれを聯想れんそうした。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
全軍一斉に銃射を開始し、喊声かんせいとどろかし、旗幟きしを振って進撃の気勢を示した。水軍も亦船列を整えてかね、太鼓を鳴らして陸上に迫らんとした。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山笠は、ときどき、ワッショ、ワッショ、と、喊声かんせいをあげて走りだす。山笠には、どれにも、十人ほどの大人おとながついている。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
走っていた足を釘づけにして、紋也は露路へ突っ立ったが、その間も前後の敵の勢いは、威嚇的の喊声かんせいを上げながら、二人のほうへ寄せて来た。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
両軍相争い、一進一退す、喊声かんせい天に震い 飛矢ひし雨の如し。王の馬、三たびきずこうむり、三たび之をう。王く射る。射るところの、三ふく皆尽く。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
群集は乱れ立ち、列は中断し、人々は走り出し散乱した。ある者は攻撃の喊声かんせいをあげ、ある者は色を失って逃げ出した。
そのために作業はずんずんはかどって、水が減るに従って大きな鯉が躍りあがったり、大鯰が浮いたりして、濠の周囲まわりには至るところに喊声かんせいがあがった。
赤い牛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
のみならずその音は次第に高くざわめき立って、とうとうたたかいでも起ったかと思う、烈しい喊声かんせいさえ伝わり出した。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
喊声かんせいがあがる。見ると、さいの角の一本前立てうったかぶとに、黒糸おどしのよろいをつけた武者が、馬上に三尺二寸(一メートルたらず)の大太刀をふりかざしつつ
だんまり伝九 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すると、大ぜいの者は「やあい、こわくなって逃げ出しやがった。やあい、ばか野郎!」と喊声かんせいをあげた。
八五郎は思わず喊声かんせいをあげました。黄八丈の財布が一つ、しごいてみると、中から出たのは、数も百二十枚、昨夜女隠居が盗られたという小判に紛れもありません。
突然、口々に罵り叫んだ声が聞えたかと思うや同時に、どッとひしめき騒ぎ立った喊声かんせいが伝わりました。
「そうだ!」波田の気合のかかった言葉につり込まれた、とびらの外の火夫たちは、一斉に喊声かんせいをあげた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
彼らは引きかえすとまた進み、退しりぞいては再び喊声かんせいを張り上げた。そうして、時刻をいてこの数度の牽制けんせいを繰り返しているうちに、最早対岸からは矢が飛ばなくなって来た。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
三国志流にいえば旌旗せいき林の如く風に飜って喊声かんせい天地に震うというようなすさまじい勢いだった。
広間の方でどっ喊声かんせいが起る。ここで二人の私話ささやきまぎれて聞えなかったが、暫くして
やっと向う側の歩道へすり抜けた刹那、右手の横町から、どっと喊声かんせいがあがった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「わア」「わア」という、喊声かんせいとも、悲鳴ともつかぬ、人々の叫喚が、嵐のようにき上った。格納庫が火を吹いたので、それを発見した一人が、度を失って、人々に告げ廻ったのだろう。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
彼は喊声かんせいを上げて来る。打つてこぶこしらへる。癅がたひらになる。又喊声を上げて来る。又癅を拵へる。又それが平になる。Sisypos の石は何度押し上げても又ころがり落ちて来るのである。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
人たちは、いずれも両脚を張ってはいるが、ともすると泡立つ海、波濤の轟き、風の喊声かんせい気怯きおじがしてきて、いつかはこの蒼暗たる海景画が、生気をすすりとってしまうのではないかと思われた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
わっという喊声かんせいと共に千三は球がたしかに手塚に取られたと思った、が球は手塚の靴先にバウンドした、手塚はダブルプレーを食わして喝采かっさいを博そうとあせったのでスタートをあやまったのである
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
喊声かんせいがかすかにする)奴等大勢、束になってやってきやがった。
沓掛時次郎 三幕十場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
子供たちは、喊声かんせいをあげて陸の方へかけだした。ザザア! と大波が打ちよせ、打ちかえし、時化のようにはげしかった。波は一寄せごとに小さくなり、あとは嘘のように静かなもとの海辺になった。
大根の葉 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
槍や弓や棍棒こんぼうをうちふり、喊声かんせいをあげて襲つてきました。
アフリカのスタンレー (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
と刹那の大衆は、何の声もなかった——とまず京極方の桟敷さじきがドッと勝鯨波かちどきを爆破させ宮津城下の町人も喊声かんせいを上げてそれに和した。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとトタントトタンという長鼓の音と共に一斉に喊声かんせいが上り、小屋の中がゆらめき出した。O君は頭を掻きながらにやにやわらっている。
親方コブセ (新字新仮名) / 金史良(著)
と上がる喊声かんせい、だが、その喊声を縫うようにして、さっきからの哀れな女の叫び声が、かん高く、細く細く、見物たちの耳の底に突き通った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
天地をゆるがす喊声かんせいとともに胡兵こへいは山下に殺到した。胡兵の先登せんとうが二十歩の距離に迫ったとき、それまで鳴りをしずめていた漢の陣営からはじめて鼓声こせいが響く。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
右のこととほとんど同時に、サン・メーリーの防寨ぼうさいのうちでは、暴徒らが次の喊声かんせいを上げた。それは史上にも残り、当時の判定録にもしるされたものである。
それを見すまして、マストのうえに避難していた連中は、どどっと下りた。一同は、わっと喊声かんせいをあげて、古谷局長と貝谷の隠れているところへ、駈けこんできた。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
開票場である公会堂は、坩堝るつぼのたぎる喧噪に包まれている。二階の講堂の中央で、一票ずつ開かれ、読みあげられているが、そのたびに、拍手や喊声かんせいがおこる。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
『夜間の突撃には喊声かんせいを上げず』などということがいわれているが、場合によっては喊声もあげるさ。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今や迂廻軍が敵の背後で喊声かんせいをあげているのを聞いた信玄の旗本軍も、士気とみにふるい、各将は「先手衆が来たぞ戦は勝ぞ」と連呼しつつ旗をふり鞍をたたいて前進した。
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それが汽車の通るのを仰ぎ見ながら、一斉に手を挙げるが早いか、いたいけな喉を高くらせて、何とも意味の分らない喊声かんせいを一生懸命にほとばしらせた。するとその瞬間である。
蜜柑 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼らは喊声かんせいを上げつつ、領事館めがけて殺到した。窓からさかさまに人が落ちた。と、枳殻からたちの垣の中へ突き刺って、ぶらぶらすると、一転したと思うやいなや、河の中へ転がった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
役人立会いの上墓をあばいたのはその日の夕方、予期の通り千両箱が三つ、大して深くないところから現われた時は、ガラッ八は言うに及ばず、万七も清吉も思わず喊声かんせいをあげました。
心得たとばかり駈け出そうとしたその刹那! わッと言うけたたましい喊声かんせいが挙ると同時に、何事か容易ならぬ椿事でもが勃発したらしく、突然バタバタと駈け違う物々しい人の足音が
この時、火夫室ではまた、喊声かんせいが上がった。それがサロンへ響いて来た。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
その度毎に上げる喊声かんせい、叫撃、笑撃、怨撃は容易なものではない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
張任は、こう勇断を下して、やがて一発の烽火のろしをあいずに、銅鑼どらつづみの震動、喊声かんせいの潮、一時に天地をうごかして、城門をひらいた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という喊声かんせいが上がった。ハッとして首をすくめながら、そとの様子をうかがうと、助かったと思ったのは、束の間の空頼みであったことがわかった。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ついにその喊声かんせいにまで破裂した彼らの苦悶くもんほど人を感動せしむるものは、およそ歴史を通じて存しない。
一緒に家に入り、気味の悪い一夜を明かす。タヌンガマノノの方から終夜、太鼓と喊声かんせいとが聞えた。遥か下の街では月光(月は遅く出た)の下で狂乱を演じていたようだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それが汽車の通るのを仰ぎ見ながら、一斉に手をげるが早いか、いたいけなのどを高くらせて、何とも意味の分らない喊声かんせいを一生懸命にほとばしらせた。するとその瞬間である。
蜜柑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)