しま)” の例文
旧字:
それが分ったら、ピストルなんざポケットへしまっとくことだ。下手な射撃をして、気球にでも当れば、どういうことになると思うんだ。
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「しかし友田屋、これは、少し無理かもしれないがね。人魚も骨肉相姦も、当分のうちは、神話の中にしまっておいたら、どんなものだろう」
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
拭くのも張合いのないその抽斗ひきだしの底には、どうなるか解らなかった母子の身の上を幾度となくうらなった古い御籤みくじなどが、いまだにしまってあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
その号令で、部下たちは、いっせいに、刀をしまった。ぞろぞろと、塀に添った暗い植えこみの中に消えて行った。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
片っぽの土蔵のほんのさしかけが、露路口にあって、縄をしまう納屋にでもなっていると、その、たったたたみ一畳もない場所を借りうけようと猛烈な運動をする。
しかし、兄から、そんなら実枝を貰つたらと云はれると、不意に顔が固くなるのを覚えた。では、やはり、そつとしまつて置いたものを礼助は口に出したのだらうか。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
爺さんは泣きながら、手や足や胴中を集めて、それを箱の中へしまいました。そして、最後に、子供の頭をその中へ入れました。それから、見物の方を向くと、こう言いました。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
おあいは、このふしぎな櫛を箪笥たんすのなかにしまって、再度と取り出して見ようとしなかった。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
「これはたしか蒙古もうこの字です。僕には全部は判りませんが、所々はおぼろげにその意味が推察されます。」と、忠一は手帳をしまいながら、「これによって考えると、の𤢖なるものはげんの蒙古の子孫らしい。 ...
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
内ぼところいしまうのんやそうです。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それがびんしまつて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして入口の錠をガチャリとかけ、その鍵を暗号金庫のなかにしまった彼は自分の手がブルブル武者慄いをしているのに気がついた。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
が、手紙てがみ後生大事ごしやうだいじしまつておくところからると、其後そのごなにかの事情じゞやうで、たがひへだたつてはゐても、こゝろいまへだてぬなかだとふことはあきらかである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ひなの節句の日に、今夜、同胞きょうだいが一人ふえるから、蔵座敷に飾ってあるお雛さまをしまえと言いつけられた。
かれが蒐集しゅうしゅうしたところのあらゆる婦人雑誌や活動写真の絵葉書、ことにいまわしげな桃色をした紙の種類、それからタオルや石鹸や石鹸入れなどが、みんな押入れのなかにしまわれてあった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
金五郎は、あわてて、拳銃を内ポケットにしまった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
しかし僕にはそれらがどういう役をするものであるか、一つとして見当がつかなかったので、そのまましまってもらうことにした。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして甥が行李の底にしまっていた白鞘しらさやの短刀を捜したが、それは見つからなくて、代りに笹村が大切に保存していたある人の手蹟をとどめた唐扇とうせんなどが出て来た。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
おい、お前は思いきりのわるい奴だな、キンチャコフ。そのピストルなんかしまって、これからどうすればわれわれは無事地上に下りられるかを
空中漂流一週間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
床下の弗函ドルばこしまってあると云う有金だけでも、少い額ではなかろうと云うのであった。その中には幾分例の小判もあろうという推測も、あながうそではなかろうと思われた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そこへマリ子がバタバタ階段をあがってくる気配がしたので、私は帆村に、あとを聞いてみる余裕もなく、その薬壜をまた元のポケットにしまいこんだ。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それじゃね、晩にお刺身を一人前……いいかえ。」と言って、お国は台所の棚へ何やらしまい込んでから、茶のへ入って来た。やわらかものの羽織を引っけて、丸髷まるまげに桃色の手絡てがらをかけていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は咄嗟とっさに、その二つの証拠品を、マッチ函の中にしまった。これで血の脅威からは脱れることができた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お増はそう言って、指環をサックにしまった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
臼井は記名捺印なついんをして、その預り証を川北老に手渡した。川北老はそれをすみれ嬢に見せ、嬢がうなずくと、それを八つにたたんで、胸のポケットにしまってボタンをかけた。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
男は筒に煙管きせるしまいこみながら、つぶやいた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
そうでもなければ、ねえ閣下、鞄の中に杉の角材などを大事そうにしまっておくわけがないですよ
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(無電装置と放射線計数管と——妙なのが靴の中にしまってある?)と、帆村は首をひねった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
烏啼は、貫一のピストルをわしづかみにして、さっさと懐中へしまいこんだ。貫一はあわてた。
ワイトマンに疑いを抱かせるいとまもなく至極自然にそれをポケットにしまいこんだことにある。
軍用鼠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なるほど沢山のロケットがしまってある。ロケットはいいけれど、彼はその一隅に、ふといやなものを発見した。中は小暗いのでよく分らないが、それはどうやら人間らしかった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
『どうだ、聞いたか』と帆村は手帖をポケットにしまいながら、僕の横腹をついた。
街の探偵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しまい忘れた陽よけの上にも、軒端に近い舗道の上にも、真白に積ってきた。僕は俄かに空腹を感じた。その上に一椀の温い飲物もほしかった。どこかに蕎麦そばやでも起きていないかしら。
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
だが、春木少年は、その謎を秘めた宝の鍵・黄金メダルの片われと、小文字でうずめられたきぬハンカチの焼けのこりを、いつまでも厳封げんぷうして机のひきだしの奥にしまっておくことはできなかった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帆村は大切なノートをポケットにしまって、舗道の上に降りたった。
暗号数字 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ポケットから長方形の缶を出し、その中へパイプをしまった。
地獄の使者 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「燐寸は先刻さっきしまったままですよ」
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)