)” の例文
もし逆境の世にのぞんでいたら、もし輔佐の臣が良かったら——あるいはある程度までのひとには成れても、到底、なる主君ではあり得なかった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
露西亜ろしあの作家が平凡生活を書き、暗黒描写をして、尚お以上の愉悦の感興を与うるのをとするものである。
若き姿の文芸 (新字新仮名) / 小川未明(著)
花ありてこそ吾人は天地の美を知る、英雄ありてこそ人間のなるを見る、人類の中にもっともひいでたるものは英雄である、英雄は目標である、羅針盤らしんばんである
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
この珍現象ちんげんしよう目撃もくげきすることさへ容易よういとらがた機會きかいであるのに、しかもこれを寫眞しやしんにとつて一般いつぱんひとにもその概觀がいかんつたへたペアレット功績こうせきとすべきでゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
また功を遂げずして死せるをもって、世の結構の輪奐りんかんの美をるに至らずしてみたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
代助はヷルキイルをくもに見立てた積で此図を注文したのである。彼は此くもの峰だか、又巨大な女性だか、殆んど見分けのかない、かたまり脳中のうちう髣髴ほうふつして、ひそかにうれしがつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あゝなるかな暗黒やみ宮殿みやいのこの「奢侈」。
心の底では十分にもう範宴の存在がなるものに見えてきて、威怖いふをすら感ずるのであるが、小人の常として、それを真っ直にいうことができないで
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燕王は太祖の第四子、容貌ようぼうにして髭髯しぜんうるわしく、智勇あり、大略あり、誠を推して人に任じ、太祖にたること多かりしかば、太祖もこれよろこび、人もあるいこころを寄するものありたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
代助はヴァルキイルを雲に見立てた積りでこの図を注文したのである。彼はこの雲の峰だか、又巨大な女性だか、殆んど見分けの付かない、な塊を脳中に髣髴ほうふつして、ひそかにうれしがっていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この一族が、節義を立てて、当初から光秀の誘降ゆうこうをしりぞけ、断乎だんことして、反明智を守り通したことは、筒井順慶などにくらべると、大いにとしなければならない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
空を仰いで、白虹はっこうのような星雲をかけた宇宙と見くらべると、この世の山岳の大も、黄河の長さも、支那大陸のなる広さも、むしろあわれむべき小さい存在でしかない。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)