づれ)” の例文
彼は女の来ないのがまちどおしかった。彼はももじりになって入口の方を見ていた。二人づれの客があったが女の姿は見えなかった。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
山西はあわててその周囲まわりを探した。橋を渡って来た男と女の二人づれが、橋の上できょろきょろしている山西の顔を見い見い通って往った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
豆腐屋の喇叭らっぱの音がどこからかきこえて来た。広巳は腕組をして眼をふさいでいた。二人づれが横手の入口から入って来た。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
翌晩になって彼女は雑誌記者だと云う三人づれの客の席へ呼ばれた。その時同じように呼ばれて来ていた知己しりあいの女から
料理番と婢の姿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこへ二人づれの男が来て、二人の話を聞こうとでもするように顔をちかくへ持って来た。新吉は好い機会だと思った。
女の首 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
朝になって陽が高くなったところで、六七人づれの旅人が野根の方から来たので、飛脚は女と嬰児を頼んでむこうの村にやり、じぶんは一人野根の方へおりて往った。
鍛冶の母 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人づれの労働者のような酔っぱらいをやり過して、歩こうとして右側を見ると赤いにじんだような行燈あんどんが眼にいた。それは昔とまったことのある旅館であった。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
夕陽の落ちたばかりの長良川ながらがわかわらへ四人づれ鵜飼うかいが出て来たが、そのうちの二人は二羽ずつの鵜を左右の手端てさきにとまらし、あとの二人のうちの一人はを肩にして
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
明治五年ごろの晩春の夕方、伊良湖岬いらこざきの手前のいそに寄せて来た漁船があった。それは参宮さんぐう帰りの客を乗せたもので、五十前後に見える父親と、二十歳はたち位になるせがれの二人づれであった。
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三人づれ侍女こしもとらしい女が走って来た。若侍は当惑した。侍女らしい女は若侍の傍へ来た。
村の怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
朝三人づれの村の者は、台地の下で悲しみ沈んでいたわかい漁師を見つけて声をかけた。壮い漁師は白白しらじらと明けた朝の光が眼に入らないような風で、じっと人びとの顔を見ていたが
月光の下 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その春のある夜、太郎左衛門は浜松の城下へ往っての帰りに、遅く村の入口の庚申塚こうしんづかの傍まで来たところで、行手ゆくてに当惑しているらしい、二人づれの女の立ち止っているのを見た。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼女はじょちゅうが来たなら便所の判らないようなふりをしていっしょに傍まで往ってもらおうと思ったが、婢はこうした二人づれの客の処へは来ないことになっているのでそれもできなかった。
料理番と婢の姿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
づれは驚いたように黙って太郎左衛門の方をすかすようにした。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三人づれの道具箱を肩にした大工の一人を見つけて訊いてみた。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)