伏兵ふくへい)” の例文
また、なぜですと突き込むのも、何だか伏兵ふくへいかかる気持がしていやである。ちょっと手のつけようがないので、黙って相手の顔を見た。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と思うと、神代川の渓流がさかまきだしたように、ウワーッとあなたこなたの岩石がんせきのかげから、いちじに姿をあらわした伏兵ふくへい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
にがんがみだれてったところをみると、きっと伏兵ふくへいがあるのだ。それ、こちらからさきへかかれ。」
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この勇士につづいて、灰色ネズミ軍はあとからあとから突進とっしんしました。みんなはじっと息をころして、黒ネズミ軍の伏兵ふくへいがあらわれてくるのを、待ちうけていました。
川岸から南のほうのぬまにいたるあいだの細道に、防壁をきずいて、ここにドノバンらの鉄砲の名手を伏兵ふくへいさせ、悪漢どもがこの方面からくるのを、ふせごうと思ったからである。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あるいは野に伏兵ふくへいありとでも思うのか、前列後列が俄かに行を乱してかけりゆく時がある。空飛ぶ鳥が地上の人の号令を聞いたかのように感じられた時、子供たちは手をって愉快を叫んだ。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「あれって誰のことだい。伏兵ふくへいを忍ばせておいたとでもいうのかね」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「さては伏兵ふくへい、急ぎしろへ引っ返せ!」
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
と、伏兵ふくへい大いに起る。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いや、民部みんぶがしいた八門の陣、その逃げ口には、伏兵ふくへいがふせてあるゆえ、かならず討ちもらす気づかいはない」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がんのみだれてとき伏兵ふくへいがあるしるしだということは、匡房まさふさきょうからおそわった兵学へいがくほんにあることだ。おかげあぶないところをたすかった。だから学問がくもんはしなければならないものだ。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
同じ伏兵ふくへいのような挙動きょどうをして、まんまと伊那丸方いなまるがたの部下にばけ、逃げだす機会をねらっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
といいつけて、そこらの野原のはらりたてますと、あんじょうたくさんの伏兵ふくへいくさの中にかくれていました。そしてみんなみつかってころされてしまいました。そのとき義家よしいえ家来けらいたちにかって
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「さわぐことはありません。相国しょうこく、ここの天嶮は、伏兵ふくへいをかくすに妙です」
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)