乃公おいら)” の例文
「やかましい、黙れ、乃公おいらがこの破戸漢ごろつきたたき殺すんだ」岡本を睨みつけて、「野郎、出て往きやがれ、ぐずぐずすると敲き殺すぞ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ピータ 樂人がくじんさん、おゝ、樂人がくじんさん、「こゝろなぐさめ、こゝろなぐさめ」。乃公おいら陽氣やうきにさせてくれるなら、たのむ、かせてくれ、れいの「こゝろなぐさめ」を。
お前がちゃんとおとなしく御徒町の家にいた日にゃ途中でったって話も出来ないわけなんだ。そうだろう。乃公おいらは女房や子供をすてた罰で芸者家からもとうとうお履物はきものにされちまった。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「そうとも、おめえは、乃公おいらとちがって、学があるから、すぐ仮父になれるさ、岡本さんの後は、おめえがつぐんだ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「たのむよ。公園は乃公おいら達の縄張中なはばりうちだぜ。」きちさんは一種の屈辱くつじよくを感じたのであろう、うそまことか、幕の上にかいてある芸者の一人々々の経歴、容貌ようばう、性質を限りもなく説明しはじめた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
乃公おいらか、乃公はこの家の者だが、てめえこそなんだ、ふざけたことをしやがると、その蛇のようにたたき殺すぞ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「たのむよ。公園は乃公おいらたちの縄張中なわばりうちだぜ。」吉さんは一種の屈辱を感じたのであろう、うそか誠か、幕の上にかいてある芸者の一人々々の経歴、容貌、性質を限りもなく説明しはじめた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「やい、このかたり、よくも、よくも、そんなことが云えたものだ、やい、手前がいくらそんなことを云って、ごまかそうとしたって、乃公おいらの方には証人があるぜ」
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「……乃公おいらは、先月死んじゃった女房に逢いたくなって、江戸からわざわざやって来た者だが、考えてみれば、此方がばかさ、やかましく云や、かえって耻さらしだ……」
立山の亡者宿 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ああこわかった、乃公おいらが街を歩いてると、何をかんちがいしやがったのか、二人の仕事師が、だしぬけに鳶口を持って追っかけて来たのだから、命からがら逃げて来たのだよ」
遁げて往く人魂 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「形見だから、執っといてくんねえ、乃公おいらの後を継いでくれるのは、おめえだけだ」
お化の面 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)