不都合ふつごう)” の例文
かつて私にどうも近頃ちかごろの生徒は自分の講義をよくかないで困る、どうも真面目まじめが足りないで不都合ふつごうだというような事を云われた事があります。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不都合ふつごうやつだ。しかしおとなしく人形をだしたから、いのちだけはたすけてやる。どこへなりといってしまえ。またこれから泥坊どろぼうをするとゆるさんぞ」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
手近なところから岸へあげて、どこかへ逃がしてしまったのだろうが、身替りになった七人をそのまま八丈島はちじょうじままでつれて行かれては大きに不都合ふつごう
顎十郎捕物帳:13 遠島船 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
こんな不都合ふつごうきわま汽車きしゃいとか、みな盗人ぬすびとのような奴等やつらばかりだとか、乗馬じょうばけば一にちに百ヴェルスタもばせて、そのうえ愉快ゆかいかんじられるとか
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
鉄風 しかし、俺が考えるには、この問題は別に、須貝の方で不都合ふつごうな点は無いように思うがね。問題を面倒にしているのは、主として家の連中じゃァないのかい。
華々しき一族 (新字新仮名) / 森本薫(著)
きのうは校長まででてきて、いま一芳輔の両親にも話し、本人にもさとしてくれ。こんど不都合ふつごうがあればすぐ退校たいこうめいずるからという話であったそうな。どんな不都合ふつごうを働いた。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
が、駕籠側かごわきにいた民蔵たみぞうは、サッと色をかえて、この不都合ふつごうな密告をしてきた少女を、人目さえなければ、ただ一太刀ひとたちってすてたいような殺気をありありと目のなかにみなぎらせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
種々の不都合ふつごう、種々の反対に打ち勝つことが、われわれの大事業ではないかと思う。それゆえにヤコブのように、われわれの出遭であ艱難かんなんについてわれわれは感謝すべきではないかと思います。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いっそ己は今からでも遅くはないから、乞食か労働者の群に這入はいって、日本を後に、そう云う国々を流れ歩いたらどうであろう。先ず順序として、最初に池田屋の店で不都合ふつごうを働いてひまを出される。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
不都合ふつごうばん明日あした学校へいって校長に談じましょう」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
不都合ふつごうな母親だ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
自然の興趣に伴わざるのうらみはあるが、新聞の紙面にはもとより限りのある事だから、不都合ふつごうを忍んで、これを一二欄ずつ日ごとに分載するつもりである。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
化かして不都合ふつごうやつだ。だが今度だけは助けてやってもいい。まあ、何でこの二人を化かしたか、その理由わけ
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
出てあるきさえすれば必ず誰かに逢う。「おい君は宿直じゃないか」と聞くから「うん、宿直だ」と答えたら、「宿直が無暗むやみに出てあるくなんて、不都合ふつごうじゃないか」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はなはだ不都合ふつごうであります。しかし意識の連続と云う以上は、——連続の意義が明暸めいりょうになる以上は、——連続を形ちづくる意識の内容が明暸でなければならぬはずであります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
上げるなんて、不都合ふつごうな事があるものか。上げてやるったって、誰が上がってやるものか
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おれは即夜そくや下宿を引きはらった。宿へ帰って荷物をまとめていると、女房にょうぼうが何か不都合ふつごうでもございましたか、お腹の立つ事があるなら、っておくれたら改めますと云う。どうもおどろく。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おれに何の不都合ふつごうがある。彼奴あいつさえいなければ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)