酒徒漂泊しゅとひょうはく
昨年の霜月のなかばごろ、私はひさしぶりに碓氷峠を越えて、信濃路の方へ旅したのである。山国の晩秋は、美しかった。 麻生豊、正木不如丘の二氏と共に、いま戸倉温泉の陸軍療養所に、からだの回春を待ちわびている三百人ばかりの傷病兵の慰問を志して、上野 …