凜々りんりんたる声が澄んで、三ツ扇の紋幕をかなぐり上げるや、たたたたたとそこへ駈け現われて来た一人は、黒絖龍文くろぬめりゅうもんの小袖にたすきを綾なし、青月代あおさかやきに白鉢巻をキリッと締めて
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)