縦横たてよこに道は通ったが、段の下は、まだ苗代にならない水溜みずたまりの田と、荒れたはたけだから——農屋漁宿のうおくぎょしゅく、なお言えば商家の町も遠くはないが、ざわめく風の間には、海の音もおどろに寂しく響いている。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)