僕はそちらを向いたまま、説教因縁除睡鈔せっきょういんねんじょすいしょうと言う本を読んでいた。これは和漢天竺てんじくの話を享保頃の坊さんの集めた八巻ものの随筆である。しかし面白い話は勿論、珍らしい話も滅多めったにない。
死後 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)