どこかはらはらしたところのある思いで伸子は川辺みさ子がウィーンへ立つ前の訣別演奏会フェアウェルコンサートをききに行った。それはベートーヴェンの作品ばかりのプログラムで上野の講堂にひらかれた。
道標 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)