市九郎は、現往明遍大徳衲げんおうみょうへんだいとくのうの袖に縋って、懺悔のまことをいたした。上人しょうにんはさすがに、この極重悪人をも捨てなかった。市九郎が有司ゆうしの下に自首しようかというのを止めて
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)