これを見て、よき敵を探そうと思い立った武蔵国住人熊谷次郎直実くまがいのじろうなおざねは、磯の方へと道を急いだ。折しも、見るからに華やかな鎧武者がただ一騎、岸づたいに、落ちてゆくのにぶつかった。
「そこへ行くと社長さんは斯うして黙って坐っていらっしっても、そのまゝ熊谷次郎直実くまがいのじろうなおざねでございます。肚が出来ていらっしゃるからかないません。人格の力は恐ろしいものでございますな」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)