この十五坪住宅の主人が夜かわやの窓から何気なにげなく外を見たところ、トランクが月の光に照らされて、ひとりで道を歩いていたという東都怪異譚とうとかいいたんの始まり——あの頃さらに以前の関係者に相違ない。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)