今その印象記を書くのに当り、本所両国ほんじよりやうごくと題したのは或は意味を成してゐないかも知れない。しかしなぜか両国は本所区のうちにあるものの、本所以外の土地の空気もただよつてゐることは確かである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)