過ぐる未年ひつじどし才牛さいぎゅう市川団十郎が、日本随市川のかまびすしい名声をにのうて、あずまからはるばると、都の早雲長吉座はやぐもちょうきちざに上って来た時も、藤十郎の自信はビクともしなかった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)