声はあやなき闇に迷ひて消ゆるが如くるが如く、空にかくれてまたふたゝび空より幽に出で来るごときを、吾が声ともひとの声ともおぼつかなく聴きつゝ、濁劫悪世中ぢよくごふあくせちゆう多有諸恐怖たうしよきようふ悪鬼入其身あくきにふごしん
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)