こんな話をきくと大概の人が御愁傷様ごしゅうしょうさまでというような似たりよったりの顔付かおつきをするものだが、ところがここにたった一人
「はッ、いつも朝御飯を戴いておもてへ出ますのが、今日は御玄関が開くとそのまま飛出しました。これが前兆と申すのでございましょうか、誠に争われぬもので、御愁傷様ごしゅうしょうさま。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)