八橋の男に宝生栄之丞ほうしょうえいのじょうという能役者のうやくしゃあがりの浪人者があった。両親ふたおやに死に別れてから自堕落じだらくに身を持ち崩して、家の芸では世間に立っていられないようになった。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)