探険の興は勃然として湧起ってきたが、工場地の常として暗夜に起る不慮のわざわいを思い、わたくしは他日を期して、その夜は空しく帰路きろを求めて、城東電車の境川停留場さかいがわていりゅうじょう辿たどりついた。
放水路 (新字新仮名) / 永井荷風(著)