真打しんうちとして語った矢野津ノ子の「双蝶々廓日記ふたつちょうちょうくるわにっき・八幡引窓の段」を、金五郎は恍惚となって聞いた。まだ二十五六歳の青年であるが、その語り口の巧妙さはほとんどしんに入っていると思われた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)