藤原南家にも、常々、此年よりとおなじやうなおむなが出入りして居た。郎女たちの居る女部屋までも、何時もづか/\這入つて来て、憚りなく物語つた。あの中臣志斐媼なかとみのしひのおむな——。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)