かげろふ断章かげろうだんしょう
誰も居てはいけない そして樹がなけらねば さうでなけらねば どうして私がこの寂しい心を 愛でられようか 遠くの路を人が時時通る 影は蟻のやうに小さい 私は蟻だと思つて眺める 幼い児が泣いた眼で見るやうに それをぼんやり考へてゐる 何もしない …