滑走かっそう
雁江の病室には附添ひの看護婦がゐた。彼女と同じ位の年輩だったが、看護婦の方が遙かに大人びてゐた。長い患ひが、この頃やうやく癒えて来ると、雁江は身体だけでなく心までがすっかり変って来るやうな気がした。病室には早咲きのシクラメンがあった。看護婦 …