あの顔あの声あのかおあのこえ
門司から基隆まで 勿論船の上である。Tと名乗る男——彰化で料理屋を営んでゐる男——口髭を生やしてゐる男。 「こんなに静かなことは珍らしいです」 それはまた、両蓋の金時計を幾度も出して見る男——用が無くても船員に話しかける男——誰にでも飯が食 …