楽焼らくやき)” の例文
小供はセルロイドの玩器おもちゃを持つ、年寄は楽焼らくやき玩器おもちゃを持つ、と小学読本とくほんに書いて置いても差支さしつかえない位だ。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
柔脆じゅうぜいの肉つきではあるが、楽焼らくやきの陶器のような、粗朴な釉薬うわぐすりを、うッすりいたあかと、火力の衰えたあとのほてりを残して、内へ内へと熱を含むほど、外へ外へと迫って来る力が
火と氷のシャスタ山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
楽焼らくやき煎茶せんちゃ道具一揃ひとそろひに、茶の湯用のうるし塗りのなつめや、竹の茶筅ちゃせんほこりかむつてゐた。
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
楠の天井。一間二枚の襖は銀泥ぎんでいに武蔵野の唐紙。楽焼らくやきの引手。これを開きますると八畳のお座敷は南向のまわり縁。紅カリンの床板、黒柿の落し掛。南天の柱なぞ、眼を驚かす風流好み。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
左脇の家に人数多あまたつどい、念仏の声洋々たるは何の弔いか。その隣に楽焼らくやきの都鳥など売る店あり。これに続く茶店二、三。前に夕顔棚ありて下に酒酌む自転車乗りの一隊、見るから殺風景なり。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
品物もあらゆるものに及び、技法もあらゆる変化に及びます。堅い磁器から柔かい楽焼らくやき、白い白磁はくじ、青い青磁せいじあい染附そめつけ、赤の上絵うわえ、または象嵌ぞうがん絞描しぼりがき流釉ながしぐすり天目てんもく緑釉みどりぐすり海鼠釉なまこぐすり、その他何々。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
茅堂もし画の事を論ぜんとならば今少し画の事を研究して而して後に論ぜられたき者なり。楽焼らくやき主義ノンコ趣味を以て鳥羽僧正の画を律せんとするは瓢箪ひょうたんを以てなまずを押ふるの類か。(四月二十七日)
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ませた娘の十六のが楽焼らくやきの皿にさくらんぼうを山盛り一ぱい持って来る。
さくらんぼ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)