更衣ころもがえ)” の例文
春着を脱いで夏の薄物にかえる更衣ころもがえころは、新緑初夏の候であって、ロマンチックな旅情をそそる季節である。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
お父さんの書斎から拝借して来た葉書へ英語通信教授の見本申込をしたためた時、僕は又更衣ころもがえの句を胸に浮べた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同じく衣を改めることを詠じながら、夏の更衣ころもがえと全然別の趣を捉えているのをとしなければならぬ。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
そのうち定期の三週間も過ぎて、御米の身体はおのずからすっきりなった。御米は奇麗きれいに床を払って、新らしい気のするまゆを再び鏡に照らした。それは更衣ころもがえの時節であった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わかい、すらりとしたしらかばは、ちょうど更衣ころもがえをしているところでありました。
谷間のしじゅうから (新字新仮名) / 小川未明(著)
これに反して子之助は、人にあたうる物に種々の趣向を凝らし、その値の高下を問わなかった。丸利、丸上、山田屋等の袋物店に払う紙入、煙草入の代は莫大ばくだいであった。既にして更衣ころもがえの節となった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
夏の更衣ころもがえ花散里はなちるさと夫人からお召し物が奉られた。
源氏物語:42 まぼろし (新字新仮名) / 紫式部(著)
御手討の夫婦なりしを更衣ころもがえ
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
この旅のいづこの宿に更衣ころもがえ
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえ地形方丸じぎょうかたまる
この句もやはり、そうした主観的郷愁の一咏嘆いちえいたんであるが、特に心の詩情を動かしやすく、ロマンチックで夢見がちな初夏の季節を、更衣ころもがえの季題でとらえたところに、句の表現的意義が存するのである。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
えり垢の春をたゝむや更衣ころもがえ 洞池
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
目立たぬや同じ色なる更衣ころもがえ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえ母なん藤原氏なりけり
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
見世はいて一人居るや更衣ころもがえ 助然
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
更衣ころもがえ野路のじの人はつかに白し
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
ときじくぞ雨は降りける更衣ころもがえ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえ母なん藤原うじなりけり
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
更衣ころもがえ小者こものはしたに至るまで
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえすそをからげてほうき持ち
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
更衣ころもがえしたる筑紫つくしの旅の宿
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
任重く心軽しや更衣ころもがえ
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)