鼻頭はながしら)” の例文
(お前はうるさいね、)と手にしていた針のさき指環ゆびわに耳を突立つったてながら、ちょいと鼻頭はながしらを突いたそうでございます、はい。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ここの電話じゃ急のことにはらちがあかないから、わたしお隣の緑軒みどりけんでかけてきましたわ」お絹はそう言って、鼻頭はながしらににじみでた汗をふいていた。
挿話 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
土鼠もぐらつちなかをもくもくつてきますと、こつりと鼻頭はながしらツつけました。うまいぞ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
お庄も寒い外の風に吹かれながら鼻頭はながしらを赤くして上って来た客に声かけて、垢染あかじみた蒲団などを持ち出して行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お増の家のすぐ近くの通りをうろついている犬に、細君はふと心をかれた。その犬の狐色の尨毛むくげや、鼻頭はながしら斑点ぶちなどが、細君の目にも見覚えがあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
娘は低い鼻頭はながしらのところを、おりおり手でおおうようにして、二十二にしては大人びたような口の利き方をした。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
とお島は鼻頭はながしらの汗もふかずに聞いていたが、「気のはやい御父さんですからね」と溜息をついた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
上向うわむきになった大きな鼻頭はながしらと、出張った頬骨ほおぼねとが、彼の顔に滑稽こっけいの相を与えていたが、が高いのと髪の毛が美しいのとで、洋服を着たときの彼ののっしりしたいかつい姿が
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)