鬼薊おにあざみ)” の例文
ちよんぼりとあるうすまゆどうやらいたいけなつくりだけれども、鬼薊おにあざみはなかとばかりすら/\とびて、わる天窓あたまでもでてやつたらてのひらさゝりさうでとげ/\しい。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五月に、田村成義の口入れで秋山儀四郎に迎へられて、浪花座へきまつた菊五郎一座に加つて、大阪へ初下ハツクダりをした。「鬼薊おにあざみ」の稲瀬川に出る恋塚求女の役であつた。
市村羽左衛門論 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
灌木はミヤマはんの木のせさらばひたるがわづかに数株あるのみ、初めは草一面、後は焦沙せうさ磊々らい/\たる中に、虎杖いたどり鬼薊おにあざみ及び他の莎草しやさう禾本くわほん禿頭とくとうに残れる二毛の如くに見るも、それさへせて
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
土手には一ぱいさわれば手足もれ痛む鬼薊おにあざみが茂っています。
監獄署の裏 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その内に、床の間へ目が着きますとね、掛地かけじがない。掛地なしで、柱の掛花活かけはないけに、燈火あかりには黒く見えた、鬼薊おにあざみが投込んである。しからん好みでしょう、……がそれはまだい。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)