)” の例文
旧字:
私も近頃は、少しはける口でもあり、一家そろって、以前の貧苦を語り草に、晩の御膳でもいただいたら、どんなに愉悦ゆえつかわかりません。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、野暮やぼな人間ですからさっぱりけないんです。だが、きょうは少し飲みましょうよ。顔でもあかくしていねえと景気が付きませんや」
半七捕物帳:03 勘平の死 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
会議と言っても、いつもそう固く控えてばかりいられないし、それに、御大造酒先生をはじめける連中が揃っているので、早くいえば酒宴である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
……大和田は程遠し、ちとおごりになる……見得を云うまい、これがいい、これがいい。長坂の更科さらしなで。我が一樹も可なりける、二人で四五本傾けた。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ガルールの連中は大いにける口ながら、モッフの言葉もあるので、ごく控え目に飲んだ。実際、海はなお荒れ狂っていて、まだまだ暢気に構える時ではなかった。
「田川さん、あなた本当にけないんですか、不思議ですね。酒を飲まないくせに冒険を愛するなんて。あらゆる冒険は酒に始まるんです。そうして女に終るんです」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
松屋から帰途かえりに食傷横丁に入って、あすこの鳥料理に上った。私は海鼠なまこさかなけぬ口ながら、ゆっくりした気持ちになって一ぱい飲みながら、お宮のために鳥を焼いてやって
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
大分ける人と見えて、葡萄酒だ、ウイスキーだ、とたらふく飲んだり喰ったりして、腹一杯になると今度は眠くなったんでしょう。少しやすませろ、部屋はどこだ、案内しろっていうんです。
耳香水 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
「うむ、大平山の隠居から貰って来たのじゃ。又六はけぬ口であったな」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どれもこれも、侍伝法でんぽう、大男で酒のみである。上の弥左と末の文蔵だけが、あまりけない。そのかわりに喧嘩がすきだ。
田崎草雲とその子 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出してくんな……それじゃアおさよさん、ちょっくら瓦町へ行って来ますよ。おしん、おさよさんはける口だ。晩にゃア一本つけてナ、帰途に俺が魚甚へ寄って何かよさそうな物を
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
第六天の神主の鏑木甲斐かぶらぎかいという人が、かなりける方で、道庵とも話が合うのだから、これから興に乗じて、その人をそそのかそうという企らみのように解釈するのも、余りに穿うがち過ぎているようです。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
蝶吉はのこりすくなになった年期に借り足して、母親を見送ってからは、世に便たよりなく、心細さのあまり、ちと棄身すてみになって、日頃から少しはけた口のますます酒量を増して、ある時も青楼ちゃやの座敷で酔った帰りに
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(彼は、そうけもしない口のくせに、酒の座が好きで、よく飲み、よくはしゃぐが、酔うと、はや他愛のない男だ——)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒がける口になってから、あっちこっちに、借金はできる。お蔦はお蔦で、裸にまでなる。型どおり、心中するか、駈落かけおちか、ふた道をいばらにして
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斧四郎もける口とみえて夕焼けのように晴々と赤い顔していた。そして、お喜代の膝を枕に、寝そべった。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さ、少しはけるでしょう。水の上だが、わしらがついているから、安心して酔うておくんなさい」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かりにその背広服を、直衣のうし直垂ひたたれにかえ、頭に冠をのせたら、人品すでに、その物である。学究臭いぎこちなさもなく、酒は余りけないが、話はすごくおもしろい。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なに、かたい約束をしてきたのさ。親方も、佐々さんも、けるくちだからね、よろこぶだろうぜ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ま、お察しが悪い。旦那と一しょなので、恥かしいんですよ。ほんとは、ける口なんだもの。さあ、おかみさんも、お杯を受けたらいいじゃないの。れッたいねえ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お互いに、けるくちを知っているので、松川岸の隣松亭りんしょうていへ行って
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうなすったので。——若先生今夜は、ちとけ過ぎまする」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何しろ僕も、酒ときたひにはちっともけないたちですからね」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もうけん、もう飲けん。俺はまだ、用事を持っとるんじゃ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう、もう……けません。ぼつぼつ、おいとまを」
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おゆるしを。もうはや、一こんけませぬ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たしか、筑前は余り、けなかったの」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「市さん、どう。……今夜もける?」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちくときねえ、ここだけだぜ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『貴公は、酒がけるからよい』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「たいそうおけになりますな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「酒か。けなくてさ」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けるほうだ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)