くわ)” の例文
新太郎は以前もみじの料理場で手つだいをさせながら、けんつくをくわした上田という料理番にも、おかみさんや旦那にも、また毎晩飲みに来たお客。
羊羹 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
我国に雲のごとくでたる、言いつたえ書きつたえられたる物語にほぼ同じきもの少からず。山男に石をくわす。河童の手を奪える。それらなり。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
藻西太郎も初めの中はどうでしたか手をえ品を変えて口説かれるうちにはツイ其気になり、それに又商売は暇になる此儘居ては身代限り可愛い女房もくわし兼る事に成るし
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
のまくわずですじかいに障子へ凭れかゝって居るので、婢はしきりに話懸けて自分から笑って見せたが、一向返しの詞がないのにぐね、誰か呼びにお遣り遊ばすのと云うを
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
私が早く知ったら、何とか無事に納めたのだが、あの七兵衛めが一酷いっこくなことを云うもんだから、到頭とうとうあんな騒ぎを演出来しでかしてしまって……。そこへ出ッくわした冬子さんは、実に運が悪かったのだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たのしみはつねに好める焼豆腐うまくたててくわせけるとき
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
彼女は身をくわれる程の苦痛にも耐えた——夫を愛した——
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夢にしてばくくわせよというようなさけなきなされ方
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どの茶碗ちゃわんでかせる(くわせる)
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「へ、野暮な事を聞くもんだ。相変らずうめえものをくわしてやるのよ。黙って入物を出しねえな。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「柄にもない。一杯くわされたんだね。」
あぢさゐ (新字新仮名) / 永井荷風(著)