ひそみ)” の例文
西班牙スペイン葡萄牙ポルトガル等が独りこれを行ったばかりでなく、英も仏も皆当時はそのひそみならって同様な非人道的なことを行っていたものであった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
……一時わたくしは鴎外柳村二先生のひそみならって、西詩の翻訳を試みたのも、思えば既に二十年に近いむかしである。
「珊瑚集」解説 (新字新仮名) / 佐藤春夫(著)
青年書生のごときは、成業を将来に期すべき者なり。いずくんぞ放肆ほうし、自棄、かの両者のひそみならうべけんや。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
たとひ百二十まで生きないにしても、力の続く間、努力すればまだ少しは何か出来る様に思ふ。それで私は天寿の許す限り趙州のひそみにならつて奮励する心組こゝろくみでゐる。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
俳優たるもの何を苦しんで芸妓のひそみに倣わんとするや。江戸ッ児は意気地を尊ぶ。興行師の言う処御無理御尤となすが如きものいかでか助六長兵衛に扮し得べき。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
が、われ等は、決して彼等のひそみならって実行不能、真偽不明の煩瑣はんさ極まる法則などは述べようとはせぬ。
上吉田の三村を合せて福地ふくち村と改称したことは、甚だしく見当違いの場所へ持って行ったものであるが、福地と富士とを同一視した『国志』の編者のひそみに倣ったものででもあろうか
マル及ムレについて (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかるに旦暮仰瞻ぎょうせんしようという法然善恵の肖像を、武家のひそみにならって狩野家に頼むことをせずに、これを土佐光茂に頼んだということは、簡単にこれを出来心とのみ解釈するよりも
かの勾践こうせんひそみならふことにはならねど、朝夕これを眺めまして、私がこの玉を抜き去りたる、責めの軽からざることを思ひまして、良しやたきぎに伏し肝はめずとも、是非ともこの指環の為に働いて
こわれ指環 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
いでや私もそのひそみならって、以後はまた他日を期することとしよう。
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
ひそみをうつすも心なしや
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
里婦りふ 西せいひそみなら
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
又われ等は形而上的けいじじょうてき詭弁家きべんかひそみならって、あまりにも深入りしたる推理穿鑿せんさくふけろうともしない。何となれば、そは却って神の根本観念を失わしむるものであることを知るからである。