雲丹うに)” の例文
「先生の仰つしやる事は、石見銀山猫いらずらしいといふことで、晩酌のときたべた、雲丹うにの鹽辛がいけなかつたやうで御座います」
ここは下関名産雲丹うにの塩辛の発祥地である。小さな島であるが、どうした加減か雲丹が繁殖していて、漁村の副業に塩辛を造っていた。
九年母 (新字新仮名) / 青木正児(著)
それは珍らしく秋の日の曇った十一月のある午過ひるすぎであった。千代子は松本の好きな雲丹うにを母からことづかって矢来やらいへ持って来た。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雲丹うにだの海鼠腸このわただの、お文の好きなものを少しづつ手鹽皿に取り分けたのや、其の他いろ/\の氣取つた鉢肴を運んで置いて、女中は暫く座を外した。
鱧の皮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
悪戯いたずらや水いじりをしたり、または海草とか小蟹こがにとか雲丹うになどをあさってあるく子供や女たちの姿は、ようやく夏めいて来ようとしている渚に、日に日にえて来て
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
それと雲丹うにの玉というのを。あちらの雲丹は美味しいけれど、あなたは雲丹お好きだったかしら。私知らないわね。私たちの御飯に雲丹なんてあったことなかったことねえ。
おお、そうして、昆布を、貝類を、鮭を、荒布を、雲丹うにを、すけとうだら、樺太ますを。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
からすみ又は雲丹うにのようなものもあるから、悉皆みんな出してずん/\と飲んで、菊が止めてもくな、然うして無理に菊にあいをしてくれろと云えば、仮令たとえいやでも一盃ぐらいは合をするだろう
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
動かしているのは、雲丹うにですね。波がせて来ます。少し遠のきましょう
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さかなにしてもあぶらのないものは、それこそ煮ても焼いても、バターを付けようと雲丹うにを塗ろうと、どんなにしたってものになりません。材料を精選するということの大切なゆえんであります。
日本料理の基礎観念 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
「それはもう間違ひもありません、大層おいしいから、私にも是非とすゝめましたが、私は河豚ふぐ雲丹うには我慢にもいけません」
雲丹うにだの海鼠腸このわただの、お文の好きなものを少しづゝ手塩皿に取り分けたのや、其の他いろ/\の気取つた鉢肴はちざかなを運んで置いて、女中は暫く座を外した。
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
洒落しゃれた好い殿様だ、何卒どうぞ毎日来て下さいまし、殿様わっちの為めには大切のお店の番頭が私を贔屓で去年の暮に塩辛を呉れましたが、好い鯛の塩辛で、それと一緒に雲丹うにを貰ったんですが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
花椰菜はなやさい、千日大根、萵苣ちさ、白菜、パセリ、人蔘にんじん、穀物、豆類。海産物でははしりこんぶ、まだら、すけとうだら、からふとます、まぐろかぜ(雲丹うに)、それから花折はなおり昆布などが目についた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
「よくあれで助かつたよ、しんが丈夫な爲だらう。雲丹うにの外に、汁にまでまぶし込んであつたが」