雛鳥ひなどり)” の例文
ある学者が二軒の小鳥屋についてカナリヤが生む雛鳥ひなどりの雌雄の数を調べてみた処、甲の家では雌百に対し雄が七十七であったが
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すでに自分のさきめいを自覚している石舟斎は、この雛鳥ひなどりの孫や子を如何にもして世に出したいと思っていたに違いない。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも製法はビフチーの通りで三百目位の雛鳥ひなどりの上肉即ち赤身ばかり一斤を細かく切って塩を小匙に半分と大匙一杯の水を加えて一時間置きます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして、また、こちらがはるになってあたたかになったら、わすれずにやってくるかもしれない。そのときは、もう三とも雛鳥ひなどりは、おおきくなっていることだろう。
春がくる前 (新字新仮名) / 小川未明(著)
歌舞伎かぶきの舞台では大判事清澄の息子久我之助こがのすけと、その許嫁いいなずけ雛鳥ひなどりとか云った乙女おとめとが、一方は背山に、一方は妹山に、谷にのぞんだ高楼たかどのを構えて住んでいる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自分がもしそれを持ったなら、まるで、変り羽毛の雛鳥ひなどりのように、それを持たない世間から寄ってたかって突きいじめられてしまうではないか。弱きものよなんじの名こそ、まこと。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
姫は太宰の息女雛鳥ひなどりで、中村福助である。雛鳥が恋人のすがたを見つけて庭に降り立つと、これには新駒屋とよぶ声がしきりにあびせかけられたが、かれの姫はめずらしくない。
島原の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
次第に興奮して飛沫しぶきがさっと岩頭にはねかかるかと思うと、それをおさえるごとく元のしずかさに返るのであった、一同は大鳥のつばさにだきこまれた雛鳥ひなどりのごとく鳴りをしずめた。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「さあ、みっちゃんおやすみなさいな。雛鳥ひなどりももうみんな寝んねしましたよ」
(新字新仮名) / 竹久夢二(著)
ただし、洋食に出るにわとりは雛鳥ひなどりだから、ももの肉だけは相当食える。
料理メモ (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
雛鳥ひなどりのためにえさを探す雄鶏おんどりであるばかりでなく、同時にまたあらゆる危害から幼いものを護ろうとして一寸ちょっとした物音にも羽翅はがいをひろげようとする母鶏の役目までも一身に引受けねばならなかった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すべては、まだ足利家の曹司(部屋住み)高氏にすぎない巣の雛鳥ひなどりをあやぶむ年上たちの庇護ひごの愛情に似たものだった。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人参にんじんが二十五匁で四十カロリー、蓬蓮草ほうれんそうが二十五匁で百六十五カロリー、ジャガ芋が十二匁で六十三カロリー、雛鳥ひなどりのササ身が二十五匁で百六十四カロリー
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そのかわりに今雛鳥ひなどりを二羽、宿の裏手の鶏小屋とりごやの片すみのおりに養っている。それを時おり池へ連れて来ては遊泳の練習をさせている。もう少し大きくなったら放養するのだという。
沓掛より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
姫は太宰だざいの息女雛鳥ひなどりで、中村福助ふくすけである。雛鳥が恋びとのすがたを見つけて庭に降りたつと、これには新駒しんこま屋ァとよぶ声がしきりに浴びせかけられたが、かれの姫はめずらしくない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なに、老いてとな。山城もはや、ことし六十を迎えたが、まだまだ、老いた気はせぬ。おことらはちょうど、卵の殻を出たばかりの雛鳥ひなどりよ。はははは、男ざかりは、六十越えてじゃ」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつ去勢した雄鶏おす母鶏ははどりの代用として雛鳥ひなどりを親切に撫育ぶいくするから外国では盛に育雛いくすう用にも使われる。それもドウキングに限らない。雑種でも日本鶏でも去勢すればんなその通りになる。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
雛鳥ひなどりの飼育に無情のほほ笑みを禁じ得ない。君子の清雅であるとさえ思っていた。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雛鳥ひなどりの話に連れて玉江嬢はフト胸に浮びし事あり
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
秀吉の子飼こがいの小姓、或いは、家中の子弟などの、武将の雛鳥ひなどりたちにとっては、絶好なる実戦の練習場となったことは、次の時代を負って出た人材の多くが、まだこの頃には、みな年少十六
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雛鳥ひなどりかばう母鳥のように、お市の方は、子たちをみな膝に抱えて
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵は、振向いて、草の中を泳いで来る雛鳥ひなどりの跫音を時々待つ。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
可愛らしい雛鳥ひなどりが育ちはじめていた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雛鳥ひなどりの籠
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)