雀羅じゃくら)” の例文
ある店では堂々たる店舗を構えながら門前雀羅じゃくらを張るが如しという不景気、また一族相率いていわゆる上り身代となって富み栄えると見れば
或新時代の評論家は「蝟集いしゅうする」と云う意味に「門前雀羅じゃくらを張る」の成語を用いた。「門前雀羅を張る」の成語は支那人の作ったものである。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ここに至って益々食医の必要を感じます。もしも食医が常に検査して悪い牛乳を人に飲ませなかったらば肺病患者がたちまち減少して疾医の門前雀羅じゃくらを張るに至りましょう。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
雀羅じゃくらを張った破風はふから鬼の腕でものびそうに思われる、——その朽ちかしいだ山門の、顔をなでられてもわからないようなやみのなかに、チラリと、銀簪ぎんかんざしの光がうごきました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし一ばん貧乏くじをひいたのは、警察医のスチューワート氏でした。誤まった鑑定をしたために、その後すっかり評判が悪くなって、門前雀羅じゃくらを張るようになったそうです。
誤った鑑定 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
それにもう内が台なしですからね、私が一週間も居なかった日にゃ、門前雀羅じゃくらを張るんだわ。手紙一ツ来ないんですもの。今朝起抜けから、自分ではたきを持つやら、掃出すやら、大騒ぎ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
道場は賭場とばと一変し、門前雀羅じゃくらを張るようになった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
書肆の門前は忽ち雀羅じゃくらを張れりといっている。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
鐘楼しょうろうや堂宇は崩れ放題、本堂のうちも雀羅じゃくらの巣らしい。のぞいてみれば、観音像はツル草にからまれ、屋根には大穴があいている。そこらの足痕あしあとは、狐のか狸のか、鳥糞獣糞ちょうふんじゅうふん、すべて異界のものだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お扶持だけでは過ごしてゆけず、町医だけでも立ってゆかず、両天をかけてどうやら雀羅じゃくらだけを張らないでいる外科医者の門前に、糊目のりめ正しいかみしも供侍ともざむらいがズラリとうずまったところはまことに奇観です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雀羅じゃくらもん
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)