附馬牛つくもうし)” の例文
附馬牛つくもうしの谷へ越ゆれば早池峯はやちねの山は淡くかすみ山の形は菅笠すげがさのごとくまた片仮名かたかなのへの字に似たり。この谷は稲熟することさらに遅く満目一色に青し。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
河童かっぱ、猿、狼、熊、狐のたぐいより、昔々の歌謡に至るまで、話題すべて一百十九。附馬牛つくもうしの山男、閉伊川のふちの河童、恐しき息をき、怪しき水掻みずかきの音を立てて、紙上を抜け出で、眼前にあらわるる。
遠野の奇聞 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
附馬牛つくもうしの谷へ越ゆれば早池峰はやちねの山は淡く霞み、山の形は菅笠のごとく、また片かなのへの字に似たり。この谷は稲熟することさらに遅く満目一色に青し。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
ここには今でも安倍貞任あべのさだとうの母住めりと言い伝う。あめるべき夕方など、岩屋いわやとびらとざす音聞ゆという。小国、附馬牛つくもうしの人々は、安倍ヶ城のじょうの音がする、明日あすは雨ならんなどいう。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ここには今でも安倍貞任あべのさだたふの母住めりと言ひ伝ふ。雨の降るべき夕方など、岩屋の扉をとざす音聞こゆといふ。小国、附馬牛つくもうしの人々は、安倍が城の錠の音がする、明日は雨ならんなどいふ。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
四方の山々の中に最もひいでたるを早池峯はやちねという、北の方附馬牛つくもうしの奥にあり。東の方には六角牛ろっこうし山立てり。石神いしがみという山は附馬牛と達曾部たっそべとの間にありて、その高さ前の二つよりもおとれり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一 遠野郷とほのがうは今の陸中上閉伊かみへい郡の西の半分、山々にて取り囲まれたる平地なり。新町村にては、遠野、土淵つちぶち附馬牛つくもうし、松崎、青笹、上郷かみがう小友をとも綾織あやおり鱒沢ますざは宮守みやもり達曾部たつそべの一町十か村に分かつ。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
佐々木喜善君の報告に、今から三年ばかり前、陸中上閉伊郡かみへいぐん附馬牛つくもうし村の山中で三十歳前後の一人の女が、ほとんと裸体に近い服装に樹の皮などを纏いつけて、うろついていたのを村の男が見つけた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)