鍛冶橋かじばし)” の例文
代助はかほをしかめてみせた。紙包かみゞつみわきしたかゝへた儘、銀座のはづれ迄つてて、其所そこから大根河岸だいこんがしまはつて、鍛冶橋かじばしを丸のうちこゝろざした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから神田の商家、鍛冶橋かじばし御門の中の松平隠岐おき邸と、次つぎに八カ所回診したが、その途中、歩いているあいだは休みなしに、登に向かって話し続けた。
彼は、いつの間にか鍛冶橋かじばしを渡っていた。家へ帰る時間を、少しでも延ばしたかったのだ。京橋から銀座へ出た。そのとき、ふと彼はある手段を考えついた。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
私は鍛冶橋かじばしを渡って丸の内へ這入はいる時、いつでも東京府庁の前側にひろがっている閑地を眺めやるのである。
鍛冶橋かじばし内の吉良きらの邸で、不機嫌な顔を据えた上野介の前に、扇箱が一つ、ちょこなんと置いてあった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
るとき私が鍛冶橋かじばしそとの金物屋にいっ台火斗だいじゅうのうかって、価が十二もんめと云うその時、どう云うけだか供の者に銭を持たせて、十二匁なればおよそ一貫二、三百文になるから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よわい四十九歳に達した上野介は、上杉家に生れた春千代を養子として鍛冶橋かじばしの吉良邸に迎えた。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
かつて彼は身内のものがあやまって鍛冶橋かじばしの未決監につながれたことを思い出すことが出来る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
代助は顔をしかめて店を出た。紙包をわきの下に抱えたまま、銀座の外れまで遣って来て、其所そこから大根河岸がしを回って、鍛冶橋かじばしを丸の内へ志した。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「オオ、鍛冶橋かじばしに来た」
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)