酌量しゃくりょう)” の例文
右は衝突儀仗ぎじょうの条をもって論じ、情を酌量しゃくりょうして五等を減じ、懲役五十日のところ、過誤につき贖罪金しょくざいきん三円七十五銭申し付くる。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だから、病気になったことについては、情状を酌量しゃくりょうして、どうしてくれとは言わぬから、女のことはあきらめてもらいたい。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
本来ほんらい蛾次郎がじろうは泣いてもえてもここでその首を、侠党きょうとうにもらわれなければならないのであるが、独楽こま由来ゆらいの話から、いくぶんそのじょう酌量しゃくりょうされて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昔日は大いに酌量しゃくりょうすべき事情あるも、今日なおその方角に向かって、家屋はもちろん、便所を設け塵塚ちりづかを置くことを固く禁じているは、笑うべきの至りである。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
今少し情状を酌量しゃくりょうになって、反感をお起こしにならぬ程度にお扱いになるがよろしい。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
侠気きょうきの点を酌量しゃくりょうされて佐渡送り——お初は、一年あまり、牢屋ぐらしをして、出て来たのだったが、それ以来、彼女は一生かえれぬところへ送られた情人の渡世に転向して、やがて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
こいさんとの結婚が容易に許してもらえないで待ちくたびれた結果の焼けであるとすれば、酌量しゃくりょうの余地がないでもないが、それでは「真面目まじめな恋愛」だと称している看板に偽りがあることにもなり
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
歴史的見地よりすれば確かに酌量しゃくりょうすべき情状のある父親を持っていたが、しかし父親が非難に相当するとともに、彼は尊敬に相当する人物だった。あらゆる私の徳を有し、多くの公の徳を有していた。
もし、かれの父が、悪政腐吏の間になかったら、亀次郎も、生涯をあやまらなかったかもわからない。同様なことは、阿能十蔵にもいえる。その他の者にも、酌量しゃくりょうの余地がある。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
源氏は結婚の初めのうちはこんなふうである女がよい、独身で長く大事がられてきた女はこんなものであろうと酌量しゃくりょうして思いながらも、手探りに知った女の様子にに落ちぬところもあるようだった。
源氏物語:06 末摘花 (新字新仮名) / 紫式部(著)
官辺でも、折紙付きの毛無シ虎には、手を焼いていたところだし、吟味役人から牢番にいたるまでが、ことごとく楊志の同情者であったことも、情状の酌量しゃくりょうを容易にしたらしく
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ンびりした田舎においでられたから、江戸、柳営りゅうえいなどの、事情に精通されないのもごもっともじゃが、政治にも、裏と表があり、法の適用にも、そこは、手加減、酌量しゃくりょうなどがあって
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)