逸事いつじ)” の例文
それから、老番頭はまた、自分が知るかぎりの、同苦坊と師鉄眼との、因縁やら、逸事いつじやら、人間愛に富んだいろんな見聞けんもんばなしをして聞かせた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さすれば内裡だいり内外うちそとばかりうろついてる予などには、思いもよらぬ逸事いつじ奇聞が、舟にも載せ車にも積むほど、四方から集って参るに相違あるまい。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
甚だしきは、歴史上実在の人物の逸事いつじとして伝えられていることが、実は支那小説の翻案であったというような事も、往々おうおうに発見されるのでございます。
某月某日ぼうげつぼうじつには某所においてみなぎる流れをおかして川越えをなしたとか、その他かくのごとき逸事いつじがある、かくのごとき軍功があると、言を極めて彼の徳と彼の力を称揚しょうようする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
先生は南北戦争の逸事いつじを話して、ある夜火光あかりを見さえすれば敵が射撃するので、時計を見るにマッチをることもならず、ちょうど飛んで居た螢をつかまえて時計にのせて時間を見た、と云う話をされた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
をとこだから、いまでは逸事いつじしようしてもいから一寸ちよつと素破すつぱぬくが、柳橋やなぎばしか、何處どこかの、おたまとか藝妓げいしや岡惚をかぼれをして、かねがないから、岡惚をかぼれだけで、夢中むちうつて、番傘ばんがさをまはしながら、あめれて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
似通った逸事いつじの有る事を、何やらの随筆本で見たような気もする。
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
初君がくだんうたを入れられ玉へり、是を越後第一の逸事いつじとす。
初君がくだんうたを入れられ玉へり、是を越後第一の逸事いつじとす。