まわ)” の例文
旧字:
そのそばには一ちょうの斧がげ出してあるが、風の具合でその白いがぴかりぴかりと光る事がある。他の一人は腕組をしたまま立ってまわるのを見ている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ハッと思う間も無くクルリとまわってバタリと倒れたが、すぐには起きもあがり得ないでまずつちに手をいて上半身を起して、見ると我が村の方はちょうど我が眼の前に在った。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
つづいて夜露に濡れて汚れたわだちが重たげにまわりだす。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人も犬も草も木も判然はきと映らぬ古き世界には、いつとなく黒い幕が下りる。小さき胸に躍りつつ、まわりつつ、抑えられつつ走る世界は、闇を照らして火のごとく明かである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二百里の長き車は、牛を乗せようか、馬を乗せようか、いかなる人の運命をいかに東のかたはこび去ろうか、さらに無頓着むとんじゃくである。世をおそれぬ鉄輪てつわをごとりとまわす。あとは驀地ましぐらやみく。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)